今回は、下書きがお蔵入りになっていた、デザインを勉強するときに読んだ本のまとめがでてきたので、微調整して公開する。2014年頃にGUIアプリからWebにスイッチした際に書いたもの。基礎的な内容をメインに勉強したので、今も概ね有用と考えている。
以下からは、基本的に本文は2014年のもの、注や指定があるのは2024年のもの。勉強し始めの感想と、10年後の感想をあわせて読むと、モチベーション的に学びやすいかなと思いこのような形にする。Webサイトなんかを作っていて、どうもデザインする部分に苦手意識があるというか、作業を進める上でネックになっている感じがしたのだけど、 「別に勉強すればいいんじゃね?」ということに気づき、デザインの本を読んで勉強してみた。そのときに読んだ本たちを一挙紹介。
自分の目標は先の通り、Webサイト/アプリを作ることだけども「Webに関する本はWebの実現方法が主体で、 見た目のデザインそのもののセオリーとかは紙のデザインの本が強くない?」と本屋さんで本を探してて思ったので、 紙ベースの書籍やフライヤーなどを作るためのデザインの本を主に読んだ。そのため、 「デザイン」と広く言っているが、プロダクトデザインやインテリアデザインみたいな話は申し訳ないが入っていない。
この記事の読み方
本の情報のほかに、私の主観で以下の内容を書いている。
- おすすめ度
- ジャンル: レイアウト、色彩、タイポグラフィ
- アプリケーション: なし
ジャンルは、「この手のデザインはレイアウト、色彩、文字に分類される気がする」と思ったので、勝手に分類している。 エディトリアルデザイン的には、装丁の部分、印刷や紙についての取り扱いも知識の一ジャンルとしてある気がするが、私がフォーカスしようと思っていない部分なので、ジャンルには入れていない。
アプリケーションは、そのアプリケーションの使い方を取り扱っている書籍について、記憶に残ったものを書くことにした。べったりツールを使っていく書籍もあるが、若干触れるだけというのもあるので、 その本の雰囲気を表す一つの方向性として見てもらえるといいと思う。
日常の資料作りをサポートする、あらゆる人向けのデザイン書籍
エディトリアルデザインの入門書には、本や1枚ものを作ることを目指す本があるのは当然として、 日常的に作るものを題材にした、そもそも本だとかを作ることを目指さない本もある。 とっつきやすいものとして、こういった内容だったものをまずは紹介。
伝わるデザインの基本 よい資料を作るためのレイアウトのルール
2024リンク: 伝わるデザインの基本 増補改訂3版 よい資料を作るためのレイアウトのルール / 技術評論社- おすすめ度: ★★★
- ジャンル: レイアウト / 色彩 / タイポグラフィ
- アプリケーション: Microsoft Office
資料を作るあらゆる方面の人におすすめの書籍
デザインそのもので仕事をしていくような人たちではなく、むしろ文書、プレゼン資料やポスターのような日常的な資料を書く人たちが、伝わりやすいデザインを実現するための本。ほぼ後述のノンデザイナーズ・デザインブックのような内容なのだが、書体や題材が現在の日本人にとって馴染みのある内容で、 非常に頭に入ってきやすい。デザイナー向けの書籍と異なり、 ツールやフォントもそこにあるものを使って実現しましょう、という形になっているので、すぐ試せる。 「センスないから読みやすい資料作るの苦手だわー」と思っている人にぜひ読んで欲しい。
基本的には伝わるデザイン|研究発表のユニバーサルデザインを書籍化したような内容であるが、紙の話であり、紙のほうが読み進めやすいので本がおすすめ。
ただし、デザイナー向け書籍と比べるとあっさりと記述されているので、興味を持ったらこの後紹介しているような 本を読んでみるといいと思う。
(2024注) 流行がありそうな領域なのに、2014年発売から今でも支持されてるのすごい。
ノンデザイナーズ・デザインブック
2024リンク: ノンデザイナーズ・デザインブック / マイナビ出版- おすすめ度: ★★☆ (2024注: 基本★★★だけど日常資料レベルなら★★)
- ジャンル: タイポグラフィ / レイアウト
- アプリケーション: なし
非デザイナー向けデザイン書籍の定番
非デザイナーがデザインの話を勉強すると言ったら必ず出てくるであろうこれ。気にしない人がやってしまいがちな例を直しながら、 どういったものが読みやすく伝わりやすいのか、日常的な書類などの身近な例で解説していく。
確かに「コントラスト」「反復」「整列」「近接」という話が、非デザイナーにも伝わるようよく整理されていて読みやすい。 しかし、欧文主体でしかも作例も古い感じなので、ちょっと入ってきにくい。昔読んで、最近勉強したタイミングで また読んだのだけど、欧文の書体選びとか、後から読んだからこそ参考になった(頭に入った)感がある。 なので、読んでおく価値はあると思うけども、時間の限られたサラリーマンでも必読、という感じではないかな、という感じ。
(2024注) 改訂されているようなので、読みやすくなっているかもしれない。一度見てみると良いかも。いろいろ作ってみたあとの2024年のほうが、この本の価値を感じている。
デザイナーの勉強の書籍(基礎系)
実例がまずあってうんぬんというよりは、色は色相/明度/彩度があって、みたいな各構成要素ごとに説明していくようなスタイルで 説明されている書籍をこちらに並べている。
難しさは、先のものと同じくらいのものもあるが、安くない書体を使うことが前提だったり、印刷会社での印刷が前提だったりといった部分が 多く占めるものに関してはこちらに分類している。
タイポグラフィの基本ルール プロに学ぶ、一生枯れない永久不滅テクニック
2024リンク: タイポグラフィの基本ルール-プロに学ぶ、一生枯れない永久不滅テクニック / SB Creative- おすすめ度: ★★★
- ジャンル: タイポグラフィ
- アプリケーション: なし
文字組について易しく、しかしきっちりと解説している一冊
基本的には文字の取り扱い(書体選び、アキの話などなど)について、他のタイポグラフィの書籍同様に解説している本。 タイポグラフィの知識が全くなくても読めるレベルの読みやすさでありつつも、詳しい例を載せながらきっちりと解説している。 例えば、アキは適切に、てな感じでさらっと流す書籍も見受けられるが、本書では複数の例で、色付けしたりしてわかり 易くなるように説明されている。専門用語にはきちんとふりがなが振ってあるのもうれしい(「平体」とか)。 タイポグラフィを名乗っているが、紙面レイアウトについても触れられている。そのロジックならそれは単にやり方の一つだよね、というのを思う部分もあるわけではないが、 実例も多く読みやすいので、おすすめの一冊である。
配色&カラーデザイン プロに学ぶ一生枯れない永久不滅テクニック
2024リンク: 配色&カラーデザイン ~プロに学ぶ、一生枯れない永久不滅テクニック~ / SB Creative- おすすめ度: ★★★
- ジャンル: 色彩
- アプリケーション: なし
色の基礎知識と配色の実例について読みやすく説明。PCCSは知っておくべき
色彩調和や配色手法などの基礎知識と、Webサイトを並べて配色について説明した事例集。似たようなタイトルついてるしタイポグラフィのやつとシリーズなのかな? 色彩検定ででてくる話が一通り書いてあるのだけど、読むためのものなので問題集より読みやすいし、まぁ実例がWebサイトなので色彩検定ででてくるファッションとかインテリア/エクステリアの話より馴染みやすい。
PCCS(Practical Color Co-ordinate System:色相とトーンという二軸での色の表現)の使い方を、この本で知ったおかげで色を考えやすくなった。もっと「ちゃんと」表現できるCMYKやHSL(HSB)の状態でも、ある程度色をシステマチックに決めるための方法論を自分の中で持っていれば要らないのだろうけど、そうでなければPCCSとその使い方を知ると便利。ざっくり色を考える方式としては、自分の中で不滅だと思う。
(2024注) 2024年の今でも色を選ぶときのやりかたはこの本の発想がベースになっていて、それを便利にするために作ったpcolorsは今でも使っている。不滅の看板も伊達ではなく、とても助かっている。
デザイン解体新書
2024リンク: デザイン解体新書 / ワークスコーポレーション- おすすめ度: ★★★
- ジャンル: レイアウト / 色彩 / タイポグラフィ
- アプリケーション: InDesign / Quark Xpress / Illustrator
前提知識が必要だが、実例が非常に多く、実践的で読み応えがある一冊
実際に著者の方がデザインされた本などを題材にデザインについて解説していく一冊。 ある程度の知識があることは前提としており、いきなり読むとつまづく。 例えば「二分アキってなんだっけ?」といったように用語の方面だとか、「こっちのツメはいいけど、こっちはダメといわれても、どう違うのこれ?」という感じで、見慣れてないと違いがわからない可能性すらある(最初そうだった)。 しかし、「ああ、これが紙の世界のスタイルシートなんだ」と思うレベルに要素要素に詳しく書かれた指示と、それに対して、ただきれいだからこうしたという話ではなく、 ちゃんと理由づけて解説されているのが素晴らしい。
2006年なので、若干古さを感じなくもないが、それは置いてでも価値がある。エディトリアルデザインに興味があれば読むべき一冊。 ここに書かれている内容も、やり方の一つではあるのだと思うが、ここまで徹底解説しようとすると、そうならざるを得ない。 すでにWebデザインだとか、デザインの仕事をしていたとしても、書籍の編集に携わったことがないのであれば読んで損しないと思う。
(2024注) いまでもめっちゃ推し。違う頭があることがわかる貴重な本。
キチンと身につけたい人のためのデザインの総復習
2024リンク: キチンと身につけたい人のための デザインの総復習。 / MdN BOOKS- おすすめ度: ★★☆
- ジャンル: レイアウト / 色彩 / タイポグラフィ
- アプリケーション: InDesign / Illustrator
タイトル通り復習という感じの書籍
レイアウト、色、文字、断裁等について全般的に通して説明した本。同じように全般的に説明している「伝わるデザインの基本 よい資料を作るためのレイアウトのルール」が日常的に作成する資料にフォーカスしたのに対して、こちらは出版物を対象にすることでもう少し踏み込んだ感じになっている。フォントを自由に選びにくいといった文字に対する制約がなくなったので、特に文字についてノンデザイナー向け書籍より詳しい(Wordで1文字ずつ詰め具合を調整しろって言われても辛いものがあるものね)。紙面が前提だし、デザイナーの立場でこういうことになったらこうしてしのぐ的な話もあって、ワークフローを意識した感じ。エディトリアルデザインの分野に入っていくときに最初のころに読むとか、部分部分でやってた人が弱点を見つけるみたいなことを目指したであろうという感じの一冊。
標準DTPデザイン講座
2024リンク: 標準DTPデザイン講座 基礎編 / 翔泳社- おすすめ度: ★☆☆
- ジャンル: TODO
- アプリケーション: なし
ワークフローの勉強にはよさそう
DTPとはなんぞ、という本。こうしたらよりよいデザインになります、というよりは、こうやって進めていきます、こういうのを使います、という感じの本。 デザインとしてはあまりよくない例があるように思うので、読むのであれば、細かいことは気にせず大枠こんなか、という読み方をすればいいと思う。「CTPってなんだっけ?」とか「校正のフローはこんな感じ」か、みたいな知識的な側面で読むと参考になるとは思う。 なお、2004年と古いので、しょっちゅう変わるものの話についてはあまり役に立たない。PCのスペックとか。
TYPOGRAPHY 2014/05
- おすすめ度: ★★☆
- ジャンル: タイポグラフィ
- アプリケーション: なし
文字が大好きな人たちが書いてることがわかる雑誌
読むほど文字が好きな人たちが書いてるんだろうなってことが伝わってくる。文字について学ぼうと思っていたときに、特集「楽しく学ぶ文字入門」という表示を見かけ読んでみた。この特集はよく書かれており、本当はこれを万人におすすめに入れようかと思ったが実作業的な側面では 「タイポグラフィの基本ルール」のほうが読みやすく、例も多いのでやめた。とはいえ「フォントの見分け方」など、作業とは別の観点ではあるが、 よくでてきそうな疑問について書かれている。何より文字に対する愛が伝わってくるのがよい。買って損はない号だと思う。
(2024注) 雑誌のものを今取り上げなくていいとも思ったのだけど、文字が好きな人がいるっていうのは自分のなかで新鮮な学びだったので、そう思ったときのテキストを残した。ピンポイントでこの本じゃなくても、そういう想いのある本を読んでみると、新しい世界が見れるかも。
デザインのルール、レイアウトのセオリー。
デザインのルール、レイアウトのセオリー。 / MdN Books- おすすめ度: ★★☆
- ジャンル: レイアウト / 色彩 / タイポグラフィ
- アプリケーション: なし
レイアウトの観点のまとめ
「対称性」「統一感」「メタファー」など、挙げる観点に対して、実際の例や作った例を出して、その価値について解説していく本。 読み進めて難しくはないので、レイアウトが生み出す価値を知っておくという意味で、先に読んでおく側に分類してもよかったのだけど、 実例ベースでの解説であるし、どのような構成要素があるか知っていないと、価値が薄れてしまうかなという意味で、応用編に分類した。 作っているときに、この観点で考えたかな、という意味でチェックポイントとして良いのではないかと思った。
Design Rule Index[第2版]― デザイン、新・25+100の法則
(2024注) 結構いい本だったと思うのだけど、タイトルしか下書きになかったのでタイトルだけ紹介。
その他デザイン関連書籍ピックアップ
上述のものより、ジャンルを絞ってピンポイントで書いているような本を取り上げる。3つのジャンル分けは広すぎるものもあるので、特にしない。
たのしいロゴづくり -文字の形からの着想と展開
2024リンク: たのしいロゴづくり / BNN- おすすめ度: ★★☆
タイトルの通り。文字からどうやってロゴにしていくか、そのアイデア集のような感じ。
Photoshop+Illustrator Design Technique
2024リンク: Photoshop + Illustrator Design Technique / 翔泳社- おすすめ度: ★☆☆
作例がいくつも載っていて、どうやってそれを作っていくか、というのを説明した本。ツールの使い方のチュートリアルというよりは、 どういったテクニックを使っていくか、というお話。
たのしいインフォグラフィック入門
2024リンク: たのしいインフォグラフィック入門 / BNN- おすすめ度: ★★☆
図解するとはどういうことか、どうやって進めていけばいいか、という本。
プロになるためのWebデザイン入門講座 実践で役立つPhotoshop&Illustrator徹底ガイド
2024リンク: プロになるためのWebデザイン入門講座 実践で役立つPhotoshop&Illustrator徹底ガイド / 技術評論社- おすすめ度: ★☆☆
Webデザインの用途でPhotoshopの使い方を説明した本。悪くはないと思うけども、Webの「PhotoshopでWebデザインをはじめよう! 」のほうが読みやすいかなーといったところ。
おわりに
当然の話だけど、こうして読んできても、すぐに美しいデザインができるようになったりはしない。 やっぱり経験だな、というのが感想。でも逆に言うと、天才の粋に行かなければ、経験なのかなと思う。環境という話も大きいと思うけども。
読んできて全く役に立たなかったかというと、そんなことはなく、いい悪いとはどういうことか、というのが読む前と比べるとかなり見えるようになったと思う。 そういった意味では、方向性が少しは見えるようになったという意味で、読んできて間違いなく正解だった。 実用性という意味でも、デザイナーの意図が汲み取りやすくなったので、作りやすくなったと感じている。
なお、これを見て「それ読むならこれ読んで!」てな本があれば教えてもらえれば読もうと思うので、おすすめがあればぜひ教えてください。
2024年に読んで
「やっぱり経験だな」というのは、実践で学ぶことが多いという意味で、それはそうと思うのだけど、この本たちを読んでいたおかげで助けられたという場面はかなりあった。この10年の間に、作り運用してきたプロダクトたちの中には自分が表層まで手掛けてきたものもいくつかあるのだけど、使いやすいという評判も頂いている認識で、それはこのときの学習の影響が多分にあると思う。10年前に勉強しておけばよかったなと思うことはよくあるけど、これは10年前に勉強してよかったと思える類だなと、当時の10年後から振り返って思った。
(ブログのデザインがボロボロなことにも気づいてしまったのでなんとかしたい)